常陽リビング 10月8日号 Q and A
Q； 最近、父が寝てから下腹を押すと引っ込んで治る、そこに違和感や痛みがあります。脱腸かもしれません。どうしてこんなことがおこるのですか。
Ａ； ヘルニアとは、臓器が収まりきらなくなり本来あるべき場所から外へ異常な脱出をする状態のことを言います。下腹部や足の付け根、鼠径部から臓器が腹の外に出る病気を鼠径ヘルニアと呼びます。 『脱腸』とも呼ばれています。
鼠径ヘルニアは弱った体の構造が原因で、内部の臓器が弱った場所にできた穴から発生すると言われております。人生で鼠径ヘルニアになる確率について、約3万人の患者を追った疫学調査があります。それによると、男性の27％・女性の3％に発症するリスクがあることが分かりました。これを、茨城県の男性人口142万人で試算すると県内で38万人が人生で一度は鼠径ヘルニアになる頻度の高い病気なのです。日本ではこの病気に対して、年間14万人が手術を受けております。
発生する方法は、2種類あります。まずは、生まれつき腹壁に穴が開いてしまうものです。ほとんどがこれです。生まれたときには、睾丸は腎臓の裏、背中にあります。生まれてから1歳までの間に足の間まで下りてきて袋へ収まります。そのときに、周りの腹膜が巻き込まれることで腹壁に穴が開きます。2つ目は、年齢などの影響で体を支えている筋肉が弱ってくると同時に組織の弱った場所に穴が開いてしまいます。重力の負荷もかかる骨盤内で一番組織が弱い鼠径部を中心に弱くなります。いずれの場合でも鼠径ヘルニアに対する治療法は手術しかありません。手術は日帰りで行うこともできるようになっております。
太田 勝也 医師
ヘルニアセンター長
