今回は、確率は低いものではありますが、すべての手術に共通する合併症です。こんなことがあるのだと、知っておくことが重要です。
手術の合併症
◎疼痛・・・手術後数日~数週までの創部痛に対しては、鎮痛薬で対処し、その後痛みは徐々に軽快していきます。手術後何週間も経つのに痛みや違和感が継続することがあり、これを慢性疼痛といいます。手術によって、神経に問題となる状態が考えられます。腹腔鏡手術の方が鼠径部切開法より急性疼痛、慢性疼痛ともに少ないとされています。
◎臓器損傷・・・小腸や大腸などの腸管や、肝臓や膀胱などの腹腔内臓器や、子宮・卵巣など、ほかの臓器には十分に注意して手術を施行しますが、損傷した場合は修復が必要になります。
◎血管損傷・・・手術する部位には、血管が必ずかかわっております。大小さまざまな血管が存在して、それらを損傷することで、出血することがあります。
◎腸閉塞・・・手術操作による腹腔内癒着がきっかけとなり発症することがあります。
◎アレルギー・・・すべての手術、麻酔に共通します。アレルギーが起こると、全身がかゆくなり、発疹が出来ることもあります。ひどい場合は、急に血圧が低下し、呼吸が出来なくなることがあります。術後15分間は、これらが起きていないか、モニターを使用して体調を管理します。
◎静脈血栓症・・・ヘルニアの手術時間・術後安静時間は比較的短いため、他の全身麻酔手術と比較してリスクは低いものの、術中・術後に下肢の静脈内に血栓ができることがあります。血栓が術後に立つときに剥がれると、肺動脈塞栓症など生死にかかわる合併症を起こす可能性があります。
◎呼吸器合併症・・・高齢の方は特に、術後に排痰がしにくくなって肺がしぼんだり(無気肺)や肺炎を起こしたりするリスクがあります。基本的に手術当日から離床し歩行していただくことが予防になります。
◎脳梗塞・心筋梗塞・・・術中・術後は血栓を形成しやすく、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症の通常よりおこりやすい状態です。特に血栓症の既往がある方や、リスク(高血圧・高脂血症・喫煙・肥満・糖尿病など)のある方は、発症する可能性が通常より高くなります。場合によってはこれらをきっかけに亡くなる方もいらっしゃいます。
術後合併症は、起こる確率は、高いわけではありませんがゼロではありません。
知っておくことで予防でき、悩みが軽減することも多いと考えます。
退院後の生活について
◎退院後は便通を整え、便秘にならないように注意しましょう。
◎通常シャワー浴は退院日から可能です。入浴は翌日から可能です。
◎退院後は通常の日常生活や仕事を行えるようになります。医師の指示があるまでは、自転車の使用や強度の強いスポーツ、重たいものを持ちあげるのは避けましょう。
注意事項 日帰り手術で大事なことは、術後に起こった異変の状況を詳しく伝えていただくことです。場合によっては、入院も考えないとなりません。帰宅方法・連絡方法をあらかじめ、決めていただいておくことが重要です。術後、しっかりと経過診察を行って参ります。現在お悩みの症状を一刻も早く治し、元の生活に戻ることができることを願っております。