blog

マイコプラズマ肺炎:症状・検査・治療・登校目安まで解説

マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumoniae)とは?

症状・流行・検査・治療・登校/出勤の目安まで徹底ガイド

要点サマリー

  • 原因菌はMycoplasma pneumoniae。のど〜気管支〜肺の粘膜を傷つけ、長引く咳や発熱を起こします。多くは軽症ですが肺炎になることもあります。
  • 学童〜若年成人に多く、クラスや家族内でゆっくり広がります。潜伏期は1〜4週間と長く、流行が長引きやすいのが特徴です。
  • 抗菌薬はマクロライド系が第一選択ですが、日本はマクロライド耐性が国際的に見ても高め(地域差あり)で、改善が乏しければテトラサイクリン系やフルオロキノロン系を検討します(年齢・妊娠で使用制限あり)。
  • ワクチンは未開発。手指衛生・咳エチケット・体調が悪いときの休養が予防の基本です。

1. なぜ起こる?(原因と感染経路)

  • 原因:細胞壁を持たない小型の細菌 M. pneumoniae。一般的な「細胞壁合成阻害薬(ペニシリン等)」は効きません。
  • 感染経路:咳・会話などによる飛沫。家族・学級・寮・施設など近接環境で広がりやすいです。
  • 潜伏期1〜4週間。症状が出るまで時間がかかり、流行が長びく要因になります。

2. どんな症状?(子どもと大人の違い)

代表的症状

  • 乾いた咳が長引く(2〜3週間以上)
  • 発熱、のどの痛み、全身倦怠感、頭痛
  • 肺炎化すると息切れ、胸痛などを伴うことも

年齢による傾向

  • 学童〜若年成人で目立ちます。未就学児でも増える年があります。
  • 合併症:中耳炎、皮疹、溶血性貧血(寒冷凝集素)、神経合併症(まれ)など、肺外症状を伴うことがあります。

3. 受診の目安(緊急度の判断)

次のいずれかがあれば速やかに医療機関へ:

  • 38℃以上の発熱が3日以上続く
  • 息苦しさ、胸痛、チアノーゼ
  • 水分摂取が困難、ぐったりして反応が鈍い
  • 乳幼児・高齢者・妊娠中・基礎疾患(心肺疾患、免疫不全など)がある

(一般論であり最終判断は診察に基づきます)

4. どうやって診断する?

  • 診察・聴診胸部X線で肺炎の有無を確認。
  • 原因菌の特定はPCR/LAMP等の核酸増幅検査、あるいは血清抗体の上昇を組み合わせます。急性期単独の抗体検査は限界があるため、臨床像とセットで判断します。

5. 治療:抗菌薬はいつ・なにを?

基本方針

  • 抗菌薬が有効(ウイルス性咳とは異なる)。ただし軽症上気道炎は対症療法のみで改善することも。抗菌薬は必要時に。
  • 第一選択マクロライド系(例:アジスロマイシン、クラリスロマイシン)

改善不十分・耐性が疑わしい場合:

年齢・妊娠等の禁忌を確認のうえ

  • テトラサイクリン系(例:ドキシサイクリン:歯牙着色のため概ね8歳未満は避ける
  • フルオロキノロン系(副作用プロファイルに留意し小児・妊娠では慎重)

日本の耐性事情(臨床上の注意)

日本はマクロライド耐性株の比率が高い地域として知られ、地域や年により50〜70%程度と報告。改善が乏しければ薬剤選択を切り替えます。

対症療法

解熱鎮痛薬、去痰薬、十分な水分と休養。咳は数週間持続することがあります。

※用量・投与期間・入院の要否は重症度・年齢・基礎疾患で変わります。必ず医療機関でご相談ください。

6. どのくらい周囲にうつす?(登園・登校・出勤の目安)

  • 感染力:咳などの飛沫で広がります。家族・学級内での持続的な伝播が起こり得ます。
  • 登園・登校・出勤:明確な世界共通基準はありませんが、
    • 発熱が下がり、全身状態が良く、咳が一定程度おさまるまでは自宅療養を推奨。
    • 医師と相談し、マスク・手指衛生・換気を徹底。

7. 予防(ワクチンはある?)

  • 現在ワクチンはありません
  • 手洗い咳エチケット、体調不良時の無理をしない、人混みではマスクなど、基本的な呼吸器感染対策が有効です。

8. 流行動向(日本・世界)

  • 学童を中心に周期的な流行が知られ、2024年前後に各国で増加が報告されました。日本でも2024年に流行が再燃したとの報告があります。
  • 長い潜伏期持続する咳が、集団内での長期的な流行につながります。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 市販薬だけで治りますか?

A. 軽い上気道炎であれば自然軽快することもありますが、肺炎長引く咳では抗菌薬が必要になる場合があります。自己判断での抗菌薬使用は不可。受診して方針を決めましょう。

Q2. 家族内で広がらないようにするには?

A. 手洗い・換気・マスク・食器タオルの共用回避・十分な睡眠を。咳が強い時期は近接での会話を控えるのも有効です。

Q3. なぜペニシリンが効きにくいの?

A. M. pneumoniae細胞壁を持たないため、細胞壁合成を阻害するタイプの抗菌薬(ペニシリン系など)は作用しません

Q4. どれくらいで学校や仕事に戻れますか?

A. 解熱し全身状態がよく、咳が軽快していれば再開可能なことが多いです。周囲への配慮としてマスクと手指衛生を継続しましょう。

医療情報に関する免責事項

この情報は一般的な医学知識に基づく教育目的のものです。個別の診断・治療については必ず医療機関を受診ししてください。

関連記事