「特に原因が思い当たらないのに体が痛い」「天気が悪いと頭痛や肩こりがひどくなる」——こうした症状の背景には、自律神経の乱れが関わっている場合があります。この記事では、自律神経と痛みの関係を生理学的な視点からわかりやすく解説し、ペインクリニックでの治療法や日常でできるセルフケアをご紹介します。

自律神経とは?基本の仕組みを知ろう

自律神経とは、私たちの意思とは関係なく体の機能を自動的にコントロールしている神経のことです。心臓の拍動、血管の収縮と拡張、内臓の動き、発汗、体温調節など、生命維持に欠かせない働きを24時間休みなく担っています。

交感神経と副交感神経の役割

自律神経は「交感神経」「副交感神経」の2つで構成されています。交感神経は「活動モード」を担当し、体を緊張・興奮させる方向に働きます。一方、副交感神経は「休息モード」を担当し、体をリラックスさせる方向に働きます。この2つが状況に応じてバランスよく切り替わることで、私たちの体は健康な状態を維持しています。

📌 ポイント

交感神経(活動・緊張)と副交感神経(休息・回復)のバランスが崩れた状態を「自律神経の乱れ」と呼びます。

自律神経の乱れが痛みを引き起こすメカニズム

交感神経の過剰な活性化と血行不良

ストレスや睡眠不足、寒冷刺激などによって交感神経が過剰に優位になると、全身の血管が収縮し続けます。血管が狭くなると、筋肉や関節に十分な酸素や栄養が届かなくなり、痛みを引き起こす物質(ブラジキニンやプロスタグランジンなど)が局所にたまりやすくなります。これが、特に原因の見当たらない慢性的な肩こりや腰痛、頭痛として現れることがあります。

痛みの閾値が下がる——感じやすくなる仕組み

自律神経の乱れは、痛みの「閾値」(いきち=痛みを感じ始める境界のレベル)にも影響を与えます。交感神経が過剰に活性化されると、脳の痛みを処理する回路が過敏になり、普段なら痛みと感じない程度の軽い刺激でも痛みとして認識してしまうことがあります。これを医学的には「中枢性感作」(ちゅうすうせいかんさ)と呼び、慢性痛の重要なメカニズムの一つとされています。

筋肉の緊張が続き「痛みの悪循環」が生まれる

交感神経が優位な状態が長く続くと、筋肉は緊張したまま十分にゆるむことができません。硬くなった筋肉は血管をさらに圧迫し、血行不良が進みます。血行不良は痛みの原因物質を蓄積させ、その痛み自体がストレスとなって再び交感神経を刺激する——このようにして「痛み → 緊張 → 血行不良 → さらなる痛み」という悪循環が形成されます。

📌 ポイント

自律神経の乱れ → 血管収縮+筋緊張 → 血行不良 → 発痛物質の蓄積 → 痛みの感度上昇 → さらなるストレス → 自律神経の乱れ、という悪循環が慢性痛の背景にあります。

冬の寒さと痛みの関係について、詳しくは「冬に体が痛くなる原因」のページをご覧ください

ペインクリニックで行う治療法

自律神経の乱れが関わる痛みに対しては、ペインクリニック(痛み専門の診療科)で以下のようなアプローチを行うことがあります。

トリガーポイント注射

自律神経の乱れによって硬くなった筋肉には、押すと強い痛みが広がるしこり(トリガーポイント)ができることがあります。トリガーポイント注射は、このしこりに直接、少量の局所麻酔薬を注射する治療法です。硬くなった筋肉をピンポイントでほぐし、局所の血流を回復させることで痛みの悪循環を断つことを目指します。処置は外来で短時間のうちに行えるものが多く、日常生活への影響が少ないのが特徴です。

薬物療法

痛みの種類や程度に応じて、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬(きんしかんやく=筋肉の緊張を和らげる薬)を処方することがあります。また、自律神経の乱れが強い場合には、自律神経のバランスを整える目的で漢方薬などが使われることもあります。いずれも症状に合わせて担当医が判断いたします。

物理療法との併用

マイクロ波治療(温熱療法)で患部を深部から温めて血行を促進したり、腰椎牽引・頸椎牽引によって圧迫された神経の負担を軽減するなどの物理療法を併用することもあります。注射や薬物療法と組み合わせることで、より総合的に痛みの改善を目指します。

日常生活でできる自律神経を整えるセルフケア

医療機関での治療と合わせて、日常生活で自律神経のバランスを整える習慣を持つことが痛みの予防・軽減につながります。

  1. 規則正しい睡眠リズムを保つ:毎日なるべく同じ時刻に起床・就寝することで、自律神経の切り替えがスムーズになります。就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は交感神経を刺激するため、控えめにしましょう。
  2. ぬるめの入浴で副交感神経を優位に:38〜40℃のお湯に15分ほど浸かると、副交感神経が優位になり血管が拡張します。熱すぎるお湯は逆に交感神経を刺激するため注意が必要です。
  3. 深呼吸・腹式呼吸を取り入れる:ゆっくりと息を吐くことで副交感神経が刺激されます。1日に数分、意識的に深い呼吸を行うだけでも自律神経のバランス改善が期待できます。
  4. 適度な有酸素運動を習慣にする:ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、自律神経の調整機能を高めるとされています。無理のない範囲で継続することが大切です。
⚠ 注意

痛みが長期間続く場合や、しびれ・めまい・動悸など他の症状を伴う場合は、自己判断での対処を続けず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

まとめ|自律神経と痛みの関係を正しく理解して対処を

自律神経の乱れは、血行不良や筋緊張、痛みの感度上昇を通じて、肩こり・腰痛・頭痛などさまざまな痛みの原因となり得ます。「原因がわからない痛み」が長く続いている場合、その背景に自律神経の問題が隠れている可能性があります。生活習慣の見直しに加えて、改善が見られない場合はペインクリニックでの専門的な評価・治療をご検討ください。

こんな方はお気軽にご相談ください

原因不明の慢性的な痛みにお悩みの方、ストレスや疲労で体のこわばりが続いている方、天気や季節の変わり目に痛みが悪化する方は、一度ペインクリニックでご相談されることをおすすめします。痛みの原因を多角的に評価し、一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。

よくあるご質問(FAQ)

問診で症状の経過や生活習慣を詳しくお伺いし、必要に応じて検査を行います。他の疾患の可能性を除外したうえで、自律神経の関与を総合的に判断します。気になる症状がある方は、まずはお気軽にご相談ください。

注射の針を刺すため、チクっとした痛みはあります。ただし、使用する針は細く、処置自体も短時間で終わることがほとんどです。痛みに不安がある方は、事前に担当医へお気軽にご相談ください。

適切な治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、症状が軽減・改善するケースは多くあります。ただし、回復の程度や期間には個人差がありますので、担当医と相談しながら治療を進めていくことが大切です。

腰痛、肩こり、坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、頭痛、関節痛など、急性・慢性を問わずさまざまな痛みに対応しています。「この痛みで行っていいのかな?」と迷われる方も、まずはお気軽にご相談ください。

もちろんです。ストレスが自律神経を介して痛みを引き起こしている場合、ペインクリニックでの治療が有効なケースがあります。痛みの原因を正しく評価し、適切な治療につなげることが大切です。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。症状には個人差があり、治療法は患者さまの状態に応じて異なります。詳しくは担当医にご相談ください。本記事の内容は医療広告ガイドラインに準拠して作成しています。