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女性も『脱腸』になるの? 常陽リビング 10月22日号

常陽リビング 10月22日号

Q; 最近、実家の母が足の付け根が膨らんできたかもしれないと言っております。なにがおこっているのですか?

A; 下っ腹・足の付け根・太もも周囲にしこりが出来て違和感はないでしょうか。寝てから押すと引っ込んで治る、そこに痛みがありませんか。鼠径ヘルニアの可能性があります。鼠径ヘルニアは、咳をすることが多いひと、妊娠したことがある、運動をよくする人、腹部に負荷がかかる仕事をしている方に多い傾向があります。
鼠径ヘルニアは男性の発生頻度が高く、女性の発症頻度の9倍です。先週のおさらいになりますが、男性の鼠径ヘルニアが発生する方法は生まれたときに背中にある睾丸が、生まれてから1歳までの間にだんだんと外に下りてくる時に腹膜が引き込まれて発生します。一方で女性は子宮を支えるために、主に4種類、8本の靭帯を持っており、これで骨盤の中に固定されて支えております。子宮と恥骨を結んで固定する靭帯を子宮円靭帯と呼びます。胎生期から生まれるまでに子宮から触角のように伸びてきて、恥骨に至ります。この経路は、男性の睾丸が通って、玉袋に収まる経路と一緒なんです。睾丸の方が大きくて重い。睾丸が通るルートが広くなるので男性は鼠径ヘルニアになりやすいのです。頻度は男性と比べて少ないですが、恥骨と子宮を支える靭帯の成熟に従って、女性も鼠径ヘルニアになるのです。一方で、女性は男性と違って卵巣と子宮を有していることで、男性にはない病気を持つことがあります。NUCK管水腫と呼ばれる良性の腫瘤と子宮内膜症です。報告では稀に恐ろしい病気が隠れていることがあります。女性でも鼠径ヘルニアになる可能性がありますので医療機関へ受診してください。

太田 勝也 医師
ヘルニアセンター長

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